白梅とメジロ
轟俊
満開の白梅の花々を目掛けて青いメジロが忙しなく飛び移る
早春の甘く香る密の匂いに誘われて
昼下がりの公園のベンチで御握りの米粒を鳩に投げたみた
すると一斉にドバトの群れがクック―と鳴きながら飛び降りて来た
「この前、派手な短ーいスカートを穿いた女の人を見かけたよ。高いハイヒールを履いて。どうしてそんな格好するのかねえ。それも一人で公園を散歩しているんだよ。」
「ああ、その女の人なら見たことあるよ。そうすると気分がスーとして頭の中が空っぽになるんだってさ。何でも気持ちがいいって言ってた。」
「そうか、頭の中が空っぽになると確かに気持ちがいいよね。頭の中が真白ーくなって!どこまでも空が広がって!最高にいい気分よ!!」
隣りのベンチに腰かけていた年取った白髪混じりの男女の会話が聞こえてきた
そのベンチの後ろには古い自転車に2台並んで置いてあって
1台のバスケットには厚手の茶色いブランケット もう1台のにはジャンパーかコートらしい服が入れてあった
「ほら あそこもう赤い寒桜が咲いてる。」
「んん。」
僕は飲みかけの珈琲缶をグーと一挙に口の中に注ぎ込んだ
真っ白ーになった後はどうだったんだ?
そのミニスカートの女の運命が頭を瞬間霞めた
それがその女にとって
フォイエルバッハ的結末だったのか?
ショーペンハウアー的結末だったのか?
ロックバンドコスプレの高校生たちの通り過ぎた
公園脇の自動販売機の回収ボックスに
僕は珈琲缶を勢い良く投げ入れた……
『新・現代詩』収録(改稿)
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